魔女の瞳Ⅲ
闇夜で鴉が鳴く。

鳴き声の数からして、一羽や二羽ではなさそうだ。

「チッ…うるせぇ鴉どもだ…死臭に誘われて集まってきやがったか」

ジルコーが舌打ちする。

…百禍の怨念渦巻く山。

その怨念はあまりに強力で、小動物程度ならばそれだけで絶命する。

その死臭に引かれて、死肉を漁りに鴉達が集まってくるのだ。

「修内太、大丈夫?」

私は修内太の方を振り返る。

四人の面子の中で、人間は修内太だけ。

こういう怨念や妖気に一番免疫がないのも修内太だけだ。

毒気にやられて体調を崩していないかと思ったのだが。

「大丈夫」

多少顔色は悪いものの、修内太は山道を歩く足取りもしっかりしていた。

薄い皮膜程度の障壁を張って、怨念による体力消耗を防いでいるらしい。

なかなか障壁の扱いも上手くなってきたようだ。

我が弟子ながら感心である。

ちなみにジルコー以外は、みんな修内太と同じ事をやっている。

ジルコーは生粋の人狼だ。

この程度の怨念や妖気ではびくともしない。

むしろ森林浴みたいなものかもしれない。

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