魔女の瞳Ⅲ
ハッタリではない。

あの巨大な刀剣だ。

加えて時貞とて一流の剣豪に違いない。

例え私の全魔力を注ぎ込んだ障壁を以ってしても、彼の一太刀を受け止める事すらできないだろう。

と、そこへ。

「四門」

ジルコーが呟いた。

「加速の魔術は使えるか?使えるなら俺に行使しろ」

「え?」

私はジルコーの顔を見る。

…私の目の前で獣人態に変化しながら、ジルコーは説明した。

「一か八か、俺が奴の背後に回り込む。前後から挟撃だ。奴の剣の結界とて、同時攻撃には幾分遅れを見せるだろう。そこに賭けるしかない」

「で、でも…」

私は躊躇った。

万が一時貞の攻城刀をかわし損ねたら…その時は人狼とて無事では済まない筈だ。

如何に高い生命力を持つ人狼でも、即死だって有り得る。

だが。

「頼む四門…お嬢ちゃんじゃ加速の魔術は使えねぇもんでな」

ジルコーはニヤリと笑った。

「俺に見せ場を作ってくれや」


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