魔女の瞳Ⅲ
姿など見えない。

足音すら聞こえなかった。

一瞬にしてジルコーは私達の目前から姿を消す。

これが加速の魔術の力を得た人狼の瞬発力。

肉眼では捉えきれないほどの超高速で、ジルコーは時貞の背後へと回り込む!

しかし。

「!?」

次の瞬間、時貞は確かにジルコーの動きを捉えていた。

横をすり抜けようとするジルコーの動きに合わせて体を向け、柄を握り締めた右手を大きく振りぬく!

同時に抜き放たれる、時貞の身の丈よりも遥かに大きな刀剣、『攻城刀』。

その名の通り、城攻めの際に威力を発揮する凄まじい破壊力を秘めた刃が、そばを通り抜けようとしたジルコー目掛けて振り下ろされる!

「しまっ…!」

思わず口走るジルコー。

私も、修内太も。

確実に時貞の攻城刀によって、ジルコーが両断されると思った。

だが唯一人。

それを許さない者がいた。

「ジルコー!止まらないで!!」

そんな声と共に、桜花が右手から氷の弾丸を撃ち放つ!

弾丸は次々と時貞の体に直撃。

ダメージは与えないまでも、攻城刀の振り下ろしの速度を鈍らせた。

「ぬぅっ!娘!」

僅かに、時貞の気が桜花へと逸れる。

その隙に…!

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