魔女の瞳Ⅲ
それは、言うなれば『力を持った声』。

声そのものが、高い攻撃力を持っていると言えばいいのでしょうか。

とにかく、至近距離でジルコーの雄叫びを浴びた時貞さんの体が…いえ、正確には魂魄そのものが、まるで千切れ飛ぶようにして四散していきます。

…魂魄破壊(ソウルブレイク)。

魂魄そのものを破壊してしまう技術。

ジルコーの雄叫びは、まさにそれでした。

声に魔力を込め、霊体である時貞さんに叩きつける。

時貞さんはジルコーに近づくことさえ出来ないまま、その身をどんどん削られていきました。

そして完全に消し飛ばされる寸前で。

「勝負あったな」

ジルコーは雄叫びを止めました。

「人狼には飛び道具はねぇ…近接戦闘による直接攻撃だけ…そう考えた時点で、サムライ、てめぇの負けだ」

「…チッ」

攻城刀を地に突き立て、片膝をついたまま、時貞さんは舌打ちしました。

「何故とどめを刺さぬ…あのまま雄叫びを続けていれば、俺を完全に四散させる事もできたであろうに」

確かに。

ジルコーはとどめを刺す事ができたにもかかわらず、敢えてそれをしなかったように思います。

「ヘッ」

相当量の魔力を使い果たしてしまったのでしょうか。

少し俯き加減にジルコーは笑いました。

「そう死に急ぎなさんな…あの世に還るのは、四門達とてめぇのお姫さんの決着がついてから…それからでも遅くはねぇんじゃねぇか?」






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