魔女の瞳Ⅲ
綿毛が地面に舞い落ちるように。

私と修内太はフワリと山頂に降り立った。

着地の際の衝撃なんて感じさせない。

着地音だってさせない。

そんなのさせるようじゃ、飛翔の魔術の使い手としては三流以下だ。

「……」

着地してすぐに、周囲を警戒する。

…獣の声一つ聞こえない、静寂に包まれた山頂。

石垣と数段ほどの石段のみが残された城跡。

その周りを枯れ果てた木々が覆っている。

敗者の城の名残だと考えると、この光景は物悲しく感じられた。

しかしそれ以上に。

「驚いたわ…」

私は思わず呟く。

こんなに強い怨念が、この区域に濃密に漂っていたなんて。

この御影市に数ヶ月住んでいるけど、この場所がここまで怨念に汚染されているなんて知りもしなかった。

百禍がまだ眠っているから広域に怨念が広がらなかったのかもしれない。

でも、その『匂い』だけは御影市全域を包み込み、様々な魔性をこの街に引き寄せた。

無意識のうちに魔性達は百禍の怨念に引かれ、この街に数多く出没するようになったのだろう。

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