魔女の瞳Ⅲ
百禍の繰り出す触手の威力に驚愕する私達に、容赦なく第二撃が放たれる。

「くそっ!」

毒づきながら回避行動に移る修内太の声が聞こえた。

口にはしないものの、私だって気持ちは同じだ。

…まるで銃撃だ。

数十…もしかしたら百に及ぶかもしれない数の触手達の一斉攻撃。

反撃の余地などありはしない。

強化の魔術による身体能力をフルに生かしての回避行動が精一杯だった。

もし足を止めればあの触手によって全身を撃ち抜かれ、先程の樹木のように腐り果ててしまうのだろう。

そんなのは御免だ。

ならば。

「       っ!」

私は疾走しながら高速詠唱を唱える。

イメージしたのは大地に屹立する鋭く尖った石の群れ。

同時に地面のそこここから硬質の石柱が次々とせり出し、百禍の触手を遮った。

『石壁』の魔術。

石化系の魔術は地属性の中でも最も高度なものだ。

それ故に効果も高い。

如何に強力な百禍の触手でも、石壁を粉砕する事は不可能だった。

その石壁を盾にしながら。

「       ッ!」

私は更なる魔術を行使した。



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