魔女の瞳Ⅲ
私と修内太は顔を見合わせる。
魔術としては基礎中の基礎、大した威力もない火矢の魔術に、百禍ほどの悪霊が何故…?
少し考えを巡らせて、私は思い当たった。
…悪霊とはいえ、彼女にも生前の記憶というものがある。
とりわけ死の寸前の記憶というのは鮮烈に残っている筈だ。
攻め込んでくる大国、逃げまどう人々、燃え落ちる御影城。
その城に炎を放ったのは紛れもなく。
「そうか、火矢!」
修内太が叫んだ。
桃香姫自身も、燃え盛る天守閣で命を落としたと聞いている。
そのきっかけとなった火矢には並々ならぬ恐怖を感じている筈だ。
「修内太」
「ああ」
私の呼びかけで、彼は呪眼に魔力を注ぎ込む。
「過去の傷をえぐるみたいで気が引けるけど…勘弁な!」
修内太が半身の姿勢で右手から次々と『火矢』の魔術を放つ!
その炎に。
「ヒッ…ヒィィイィィイィッ…!」
あれ程の憎悪を撒き散らして私達を追い込んでいた百禍が、急にその勢いを弱め始めた。
魔術としては基礎中の基礎、大した威力もない火矢の魔術に、百禍ほどの悪霊が何故…?
少し考えを巡らせて、私は思い当たった。
…悪霊とはいえ、彼女にも生前の記憶というものがある。
とりわけ死の寸前の記憶というのは鮮烈に残っている筈だ。
攻め込んでくる大国、逃げまどう人々、燃え落ちる御影城。
その城に炎を放ったのは紛れもなく。
「そうか、火矢!」
修内太が叫んだ。
桃香姫自身も、燃え盛る天守閣で命を落としたと聞いている。
そのきっかけとなった火矢には並々ならぬ恐怖を感じている筈だ。
「修内太」
「ああ」
私の呼びかけで、彼は呪眼に魔力を注ぎ込む。
「過去の傷をえぐるみたいで気が引けるけど…勘弁な!」
修内太が半身の姿勢で右手から次々と『火矢』の魔術を放つ!
その炎に。
「ヒッ…ヒィィイィィイィッ…!」
あれ程の憎悪を撒き散らして私達を追い込んでいた百禍が、急にその勢いを弱め始めた。