魔女の瞳Ⅲ
その身から溢れ出すような膨大な魔力をコントロールしながら、私は『開門』する。

世界が、塗り替えられる。

現世を侵蝕するこの世とは別の世界。

しかし。

「な…!?」

側で見ていた修内太が声を上げる。

一度禁呪を目の当たりにしている修内太。

でも今回の禁呪は、彼が以前見たものとは全く異なっていた。

私の足元から広がっていくのは凍えるような死の大地ではなく、膝の辺りまで白く煙る地表。

立っている感触はあるものの、その足元に大地は見えない。

先程まで夜の闇に包まれていた空は、白く厚い雲に覆われた。

だが、太陽も月も存在しない空なのに、決して世界は暗闇ではない。

仄明るい光が世界を照らし、澄んだ空気が適度に意識を覚醒させるような感覚。

…どこまでも続く、白一色の世界。

その白はあくまで清浄で、神聖で荘厳な雰囲気さえ漂わせていた。

< 75 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop