魔女の瞳Ⅲ
「こ、ここは…」

百禍の心情を代弁するかのように、修内太が呟く。

「……」

異界の開門は成った。

私は右の呪眼に魔力の光を帯びながら静かに言う。

「死の世界は一つだけじゃないわ…前に見せた死の世界が、罪人の逝くべき地獄だとしたら…罪なき、穢れなき魂が導かれるべき世界だって存在する」

つまりここは、俗に言う『天国』という世界。

この世界もまた、地獄と同じ死の世界に違いないのだ。

…非業の死を遂げ、現世に未練を残したまま怨念を吐き続けた悪霊、百禍。

しかし彼女に罪はない。

彼女はもう真の眠りにつくべきなのだ。

現世に留まったまま眠りにつこうとするから、排除されるべき存在として忌み嫌われる。

ならば。

「百禍。無へと還りなさい。貴女はもう休んでもいい筈よ」

私は両手を天へとかざす。

その行為に呼応するように。

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