魔女の瞳Ⅲ
天空から。

分厚い雲の切れ間から、木漏れ日のように光が降り注いだ。

その光は二条、三条と折り重なって、百禍の身へと降り注ぐ。

「!」

一度はその光に苦しげな表情を見せる百禍。

しかし。

「怖くないわ」

私は呟く。

「死は決して恐ろしいものじゃない…誰にでも等しく訪れるもの…十分に生きた者に対して訪れる、永遠の安息よ」

百禍に説いて聞かせるように言葉を紡ぐ。

「もうお休みなさいな、桃香…心配する事はないわ。貴女の愛しい人も、すぐに貴女のそばに来てくれる…誰も邪魔する事はないわ…」

「……」

百禍の表情を支配していた悲哀が、徐々に薄れていく。

代わりに浮かんだのは。

『何故私に優しくしてくれるの?』

『貴女はいったい誰なの?』

そんな少女らしい問いかけを浮かべた、幼い表情だった。

その表情のまま、百禍は桃香へと戻り、やがて光に吸い込まれるようにその身を希薄にしていく。

…その姿が完全に消えた後。

「私はメグ・デッドゲ…」

そこまで言いかけて。

「んんっ!」

少し咳払い。

私は言い直した。

「私は四門メグ。永劫の闇を歩き続けて『いた』魔女よ…」

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