魔女の瞳Ⅲ
修内太に背負われたまま山道を下っていくと。

「あ、メグさん!うわっ!」

私達の姿を見つけた桜花が、何やら凄く驚いていた。

「どうしたんですかメグさん!怪我でも!?」

「ん…怪我って言えば怪我かな…禁呪使っちゃったから…でも…」

私は、地面に胡坐をかいている時貞の方に視線を送った。

「百禍は昇天したわ。怨念のひとつも残さずね」

「……」

静かに目を閉じていた時貞は、ゆっくりと私を見る。

「姫は…納得なされていたか?」

「さぁね。でも…」

修内太の背中から、私はフッと笑みを浮かべた。

「早く貴方も行ってあげた方がいいんじゃない?待ってるかもよ?」

「…あいわかった」

時貞はスッと立ち上がり、最後に一言。

「何かあれば呼べ。お主達になら助力致そう」

そう言って、その身を透き通らせるように消滅していった。

…百禍を守護する為だけに愚直に存在し続けた武士。

最早彼が、この地に留まる理由はないだろう。

「…桜花とジルコーも、ありがとね」

二人に対して私は言う。

「いえ」

柔らかく微笑む桜花。

「そりゃあ構わねぇんだが…」

背負われたままの私を見て、ジルコーが何やら怪しげに微笑んだ。

「いやいや…なかなかどうして…やるなぁ、少年」

「「何がだ!?」」

勘繰る人狼に、私と修内太は同時に怒鳴った。


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