強引上司がいきなり婚約者!?
一、互いを仮初めの恋人とする




「ほら、サインしろ。俺のものになるまで許してやらねえぞ」


キレイな眉が弧を描き、かまぼこ型の目が不敵に笑う。
彼は目鼻立ちのはっきりした華やかなお顔だから、口の端に浮かぶイジワルな表情も様になった。

淡い乳白色のガラスに囲われた室内には、午後のあたたかい光が射し込んでいる。

真っ白い壁とピカピカのテーブルに、緑とオレンジの椅子が交互に置かれた、オシャレでポップな小さな会議室。

インテリアにも凝った、キラキラした背景にだって決して霞まないでいられるのは、彼自身が洗練された絵になる容姿をしているからだ。


でも私は、彼のことちょっと苦手。

仕事はデキるし、女の子にはモテるし、みんなに好かれていてかっこいいのは認める。
だけど俺様っぽくて、なんとなく怖そうなイメージなんだもん。

なんて、本人には言えないけど。


私は眉の間にシワを寄せて、テーブルの上に置かれた紙切れに視線を落とした。

【社内恋愛法度】と題された契約書。
彼の美しい筆跡で契約内容が記され、一番下にはご丁寧なサインまでしてある。

私はチラッと目を上げて、長い脚を組んで正面に座る彼に言った。


「あの、主任。みんなには内緒にするので、どうかお許しくだサイ」
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