強引上司がいきなり婚約者!?
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秘密の婚約者のフリ、とはいっても、これといって特別なことを命じられているわけではない。
兎川さんって恋人相手にも俺様な感じなのかなって思ってたから、ちょっと拍子抜けだ。
だって彼が女の人に夢中になったり、甘やかしたりって想像できない。
どちらかといえば主従関係といったほうがしっくりくる。
まあそんなわけで、変わったことといえば、携帯を通じて毎日兎川さんと連絡を取っているってことくらいだ。
それもたわいのないことで、残業を終えて帰宅したとか、お味噌汁を作ってみたとか、そんな話。
1日に1往復程度のメッセージのやり取りだけで婚約者の役割を果たせているのかはわからないけど、今のところ兎川さんからの指令はなし。
思ったより随分平穏に、口止め協定を結んでから最初の1週間を終えようとしていた。
「小枝、ちょっといいか」
金曜のお昼、好実と近くのレストランでランチをして戻ってくると、デスクで仕事をしていた主任が私を呼んだ。
火曜のお弁当(おにぎりとバナナ)以来、私の料理の実力を知った彼から同じ命令が下ることはない。
その代わり、明日は特訓の予定が入ってるけど。