強引上司がいきなり婚約者!?
私が彼との距離感を測り損ねてるってことを除けば、やっぱり兎川主任の計画に欠陥はなかったってこと。
「俺の提案に感謝するんだな」
兎川さんは得意げに言って、空っぽになったお弁当箱を片付け始める。
ニッと笑った横顔が満足そうで、きっと私を思い通りに指導できてることにご満悦なんだろうなと思った。
私も最後のひとくちを頬張りながら、すっきりと晴れた青空を見上げる。
「でも、兎川さんのせいで男の人を見る基準が厳しくなっちゃったらどうしよう。兎川さんより素敵な人って、なかなかいないと思うんです」
自信があって、それに見合う実力もあって、仕事もできるし家事もできるし趣味もいい。
男前だけど色っぽさもあって、近寄りがたいかと思えば、実は男の子みたいに無邪気なところもある。
「問題ないだろ。他の男には目をやらなきゃいい」
あまりに当然というような返答がきて、私は思わず素直に頷きそうになった。
ああそっか、って。
何気なく隣を向くと、キョトンと目を丸めた兎川さんと視線がぶつかる。
兎川さんはついこぼれてしまった本音に自分でもびっくりしているような顔をしていて、彼の黒い瞳の中には同じ表情をした私が映っていた。