強引上司がいきなり婚約者!?
言われたことを理解して、それから自分が言ったことを理解する。
その瞬間に兎川さんもハッと我に返ったのがわかったから、急に火がついたみたいに頬が熱くなった。
わ、私、なんかすごく大胆なこと言った?
というか兎川さんのそれ、どういう意味ですか?
軽くパニックになった私は慌てて目を逸らし、超特急でお弁当箱を片付ける。
兎川さんもちょっと困ったように首の後ろに手を当てていて、それが私の考えなしの大胆発言のせいかと思ったら、耳まで熱くなってきた。
やばいって。
こういうのって困るよ。
必死にブレーキをかけようって思ってるのに、彼の側にいたら隠しきれない本音が顔を出す。
そのうえこんな本物の恋人みたいな会話なんかしたら、勘違いしてしまいそうになる。
「あの、じゃあ私、先に戻りますね」
私は早口に言って立ち上がり、なるべく顔を見られないようにして階段に足を掛けた。
動揺しすぎて手の中から箸入れが滑り落ち、音を立てて踊り場の床の上に転がる。
「おい、ちょっと落ち着け」
兎川さんが腰を上げるのがわかったので、私は脇目も振らずダッシュで箸入れを拾い上げて階段を駆け上がった。