男の秘密 -繋がる未来-
絵を描き始めてかなりの時間が経っていたようで、時計を見るとお昼前だった。

リビングに入ると、美味しそうな匂いが漂ってきたので、慌ててキッチンを見ると、忍がフライパンを振るっていた。

「忍さん?!」

驚いて近づくと忍はチャーハンを作っていて、その横には鍋にスープが出来ていた。

「忍さんが作ってくれたの?!」

今まで、優が作らせなかった事もあり、忍が料理をするところを見るのは初めてで、驚いた。

「あぁ、俺も滅多に作らないから味の保障は無いけど」

などと、悪戯っぽく笑ってパラパラのチャーハンを中に舞わせる姿は、誰にも見せない自分だけが見られる特権なのだと思う。

『あぁ、写真に取りたいな。』

独り占めしたいと思う心と、自慢したい心でグラグラと揺れていると、忍が心配そうに声をかけてきた。

「大丈夫か?しんどいならソファーで休んでいるといい」

「え?ううん。違うの。忍さんが私の為に料理を作ってくれるのが嬉しくて」

慌ててそう言うと、忍が疑わしそうな目をしていた。

「・・・本当は、見惚(みと)れてた。忍さんの料理してる所に」

言わないと誤解を招く事を知ったばかりなのだから、ちゃんと言おうと思い直す。

変な誤解でお互いすれ違ったり、心配させたりするのは良くない事で、恥ずかしくても誤解されないように言ってしまおうと思った。
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