男の秘密 -繋がる未来-
次の日、朝食を作って、忍を待っていたら、「おはよう」と忍が起きて来た。

その何時も通りの様子なのに、何か引っかかりを覚える。

『何だろう?何か何時もと違う』

その引っかかりは、忍が仕事に行ってからようやく分かった。

『あれは、仕事用の顔だ』

笑顔も会話の内容も、注意していなければ分からない位だが、仕事用だった。

『やっぱり、触れて欲しくなかったのよね』

昨日は頑張ろうと思ったのに、もう後悔を始めてしまう自分に気付き苦笑した。

「とにかく、木戸さんと連絡をとってみよう」




後片付けをして、一時間程経った頃、木戸の携帯に電話をかける。

― はい、木戸です ―

何時ものぶっきら棒な喋り方では無く、営業用のきちんとした話し方で電話にでたので、少し驚いてしまった。

― もしもし?」 ― 

「あ、優です。すみません」

優が何も話さないので、不振な声が向こうから聞こえ、慌てて名乗る。

― 優!もう体調は良いのか? ― 

「はい、その節はご心配をおかけしました」

― 何か他人行儀だな。それより、どうした? ― 

「いきなりですけど、忍さんのご家族の事を聞かせて下さい」

― 忍の家族の話か・・・本当にいきなりだな。  
俺の口から言う事か迷うが・・とりあえず、電話じゃなくて何処かで話そう ― 

いつもの歯切れの良さが、忍の家族の話になるとなりを潜めてしまった事に気付き、巻き込んで申し訳ないと思う気持ちになった。
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