男の秘密 -繋がる未来-
思った以上に難しい話かもしれないと、自分が踏み込んでいいのか分からなくなった。

ぼんやりと部屋の電気もつけずにソファーに蹲(うずくま)っていると、忍が帰ってきた。

「ただいま・・・電気も点けずにどうしたんだ?」

「あ・・お帰りなさい。もうそんな時間?!」

忍の声に意識が浮上して、慌てて時計を見ると、既に午後8時を回っていた。

ここに帰ったのが5時過ぎだから、3時間近くぼんやりしていた事になる。

「ごめんなさい。ご飯の用意してないの・・・」

「いや、いいよ。それより、しんどいのか?」

「ううん。大丈夫、考え事してただけ」

「なら、外に食べに行こうか」

「ううん。作り置きがあるから、今から作るわ」

慌てて立ち上がり、冷蔵庫からビールとチーズを持ってきた。

「飲んで待ってて」

そう言うと、キッチンに戻り、冷凍庫の中を確認する。

直ぐ作れそうなものを取り出し、調理を始めながら、酒のつまみに出し巻き卵を焼く。

集中していると、木戸の話を忘れる事が出来たが、問題の先延ばしだと思い直す。

『あぁまた、忍さんに嫌な思いをさせるんだろうなぁ』

そう思うと気が滅入るが、どうしても家族との関係を変えたい。
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