男の秘密 -繋がる未来-
「ごめん・・な・さい」

忍の部屋のベッドに並んで座り、忍に抱きしめられた状態で謝る。

「どうして謝るんだ?
俺は寧ろ嬉しかった・・・いや、多分母さんも父さんも嬉しかったと思う」

「え?」

忍の言葉に優が驚いて顔を上げた。

「だって、大事な幸せな思い出だろ。
それを今思い出すって事は、今、優は幸せを感じてくれてるんだと思った」

「幸せ。・・あの頃と同じように、今とても幸せよ」

今まで思い出すことも無かったあの日の光景を、鮮明に思い出す。

「どうして今まで思い出せなかったんだろう」

「心に余裕が無かったんじゃないか?」

両親が亡くなって直ぐは、心が死んでいた。

祖母の所で泣いてからは、毎日祖母の手伝いと勉強しかしていなかった。

祖母が亡くなってからは、大学の費用を稼ぐ事と、勉強する事で精一杯だった。

就職して直ぐは仕事を覚えるのに必死だったが、何処かで思い出しても可笑しく無い。

やはり、心に余裕が無かったのだろうか?
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