男の秘密 -繋がる未来-
「忍さん。そろそろ帰りましょうか?」

家で過ごす方が、忍がリラックス出来ると思い、そう言ったが、忍は何か考えているようだった。

「もう少しドライブしないか」

暫くして口を開いた忍の言葉に、少し驚いたが、直ぐに帰らなくて良い事が嬉しくて、頷いた。

車は街から徐々に離れて行き、海に着いた。

丁度夕日が美しい時間で、砂浜には人が殆ど居なかった。

「この前の撮影を思い出すわね」

あの時は朝日が眩しい時間帯だったが、少しオレンジがかった空は、夕方を思わせるようだった。

「そうだな」

二人は手を繋ぎ、靴を脱いで素足で砂浜を並んで歩いた。

寄せては返す波が足にかかり、少し冷たいが、それ以上に気持ちよかった。

何を話すわけでもないが、この時間はとても幸福だった。

時折遠くでカモメの鳴き声が聞こえる以外は、波音だけが聞こえていたが、暗くなるにつれ、カモメの声は聞こえなくなった。
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