男の秘密 -繋がる未来-
「!?忍さん!?」

慌てて離れようとして腰に回された手に力が入る。

回された両腕に意識が行く。

優を包み込むように回された腕から伝わる体温が心地いい。

更に、自分がもたれ掛かっていたのが、忍の胸板で体を通して伝わるその鼓動も心地いい。

自分が守られている感じがして、怒られそうだが、ふと、父親の胸の中を思い出した。

「急に動くと危ないだろ」

ぼうっと今の状況に浸っていると、心配そうな顔で忍が見ている事に気付いた。

どうしてこのような状況になったのかを思い出してみる。

あの夜、忍が何か怒っているような気がしたが、理由を聞く前に忍が仕事で出て行ってしまい、不安になり、不安を打ち消すように絵に没頭していた事を。

「ごめん・・なさい」

しゅんと落ち込んでいる優の背中を摩りながら「いいよ」と話す忍。

「取り込み中の所、申し訳ないけど・・点滴していいかな」

小寺の事などすっかり忘れて、二人の世界に入っていた忍と優に、少しイラついた声でそういう。

「あ、はい。お願いします」

優はそういって腕をだすが、忍のひざの上に乗ったままだ。

小寺は苦笑しつつ、その腕に点滴の針を刺す。

「個室だけど、看護師が来るから程ほどにね」

そんな事を言いながら病室を後にした。
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