男の秘密　－繋がる未来－
「よく覚えてるな。重さんの店の近くだ」

小料理屋を営む重利（しげとし）の店に到着すると、先ほどの言葉通り、優を残して忍が店に入って行った。

『何をしに行くのかしら』

ぼんやりと戸口を見ていると、少し赤い顔をした忍が出てきた。

忍の手には、いきには無かった手提げ袋があった。

足早に戻り、車を発進させる忍を不思議そうに見上げる。

「どうしたの？」

優に聞かれて気まずそうにしていたが、やがて、苦笑しながら口を開いた。

「夜ごはんを頼んでたんだけど、結婚の話をしたら冷やかされた」

「私、挨拶にも行かなくてごめんなさい」

「あぁ、後でちゃんと挨拶に行くからいいよ」

「いい匂いがする」

先ほどの紙袋から、いい匂いがしてきたので、つい、くんくんと匂いをかいで何の料理か考える。

「食欲は有りそうだな」

信号で止まっている時、優の反応を楽しそうに見ていた。

自分でも料理は出来るが、出来る程度の腕前だから、こんな時に何を作っていいか分からない。

その点、隆司や重利は体調に合わせた料理を作る事が出来るので、つい頼ってしまう。

明日は自分の手料理を振舞おうかと、チラリと考えてみたが、明日になってから考えることにした。
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