男の秘密 -繋がる未来-
「いえ、セクハラじゃないですよ。でも、私もうすぐ結婚するんです」
「そうなの?おめでとう。相手はどんな人?」
千尋が興味津々の顔で優に詰め寄る。
『あぁ、両親が生きていたら当たり前にする会話よね』
「優さん?」
今の状況をしみじみとかみ締めてしまったので、会話を忘れて立ち尽くしていた優に声をかける。
「あ、相手の方はですね。斎賀忍さんて言って、とても有名な俳優さんで、とても優しくて、カッコよくて素敵な人です」
両親に聞いて貰える日が来るなんて思ってもいなかったので、嬉しくて夢中で忍の事を話す。
「騙されてない?」
優人が心配そうな顔でそういうのは、やはり無理もない事だろうと優は思った。
「あら、優さんが選んだ人なのよ、心配ないわ」
千尋は全く心配していないどころか、逆に優人の考え方に異議を唱える勢いだった事に、驚いた。
母とこんな話をする事が無かったので、母の知らない一面を見た気がした。