ふゆの恋花火
「今日は楽しかった!
ありがとね!葵!!」
「授業全部サボっちゃったけどな!!」
葵はそう言って、満面の笑みで笑った。
葵が、わたしを家まで送ってくれたときには、辺りはすっかり闇に包まれていた。
「送ってくれて…ありがと」
ほんとは、離れたくなかった。
ここで別れるなんて、嫌だけど
わたしは、彼女じゃない。
だから、そんな我儘言えない。
「…俺のほうこそ…ありがとな。授業サボらせて。
それと、これはお礼」
葵はそう言って、すれ違いざまに
わたしの胸ポケットに、何かを入れた。
わたしは、それをポケットから出して見てみた。
「これ…って…」
それは、ストラップタイプの真っ赤なハートを持っているももぶた。
「あ、葵…」
急いで葵のほうを見ると、もうだいぶ遠くにいた。
「あ…葵ーー!!!
ももぶた、ありがとーー!!」
わたしは葵に向かって、大声で叫んだ。
「おう!!それ、俺だと思って大事にしろよーー!!」
わたしに負けないくらいの大声で返ってきた葵の言葉に
涙が出てきた。