ふゆの恋花火
「よかったぁ…見つかって…」
ももぶたを探し始めて何時間も経って
文化祭も終わり、締めの後夜祭が始まっていた。
「ごめんね、葵。後夜祭、始まっちゃったね」
「いいよ、別に。あ、花火始まるな」
葵は暗くなった外を見ながら言った。
「……あっ…」
行かないで。
わたしは咄嗟に葵の腕を掴んだ。
「……美冬?」
このまま、葵は
好きな子のとこに行っちゃう。
それで、思いを伝えて
きっと…結ばれてしまう。
そんなの、絶対に嫌。
「行かないで……」
もう無理かもしれない。
でも
だからこそ、もう少し一緒にいたい。
葵は、何も言わずにわたしの手を取って、歩きだした。
「ちょ…あ、葵…!?」
葵は聞く耳を持たず、ずんずんと歩きすすめていく。
「葵、ねぇ!葵ってば!!」
葵は、再び屋上に戻った。
「…葵…?」
葵がこっちを向くと同時に、花火が打ち上げられた。
「お前と、見たかったんだ」