【完】七瀬先輩と秘密の恋におちて
「明日の引退試合は早いから、ちゃんと早起きしろよ?竹川、お前早起きは得意だろ?」
津田先輩がイタズラにクスッと笑う怖そうな瞳は、優しさの色へと変わった。
そんな津田先輩を見つめる杏奈はまるで、太陽を見上げるヒマワリみたいだ。
「そういや、和藤、体弱いんだろ?」
「へっ……?」
不意に振られたもんだから変な声が出てしまった。
「弱いわけじゃ、わたしなら大丈夫です……」
「そうか。それならいいが、また和藤が倒れたら七瀬が心配するからよ」
七瀬先輩の名前に胸が切なさに満ちて、キュッと締め付けられたみたいだ。
七瀬先輩は津田先輩とは違う……。
こうやって真っ直ぐな気持ちを伝えに来てくれたりなんてしない。
七瀬先輩の気持ちは優しさか同情か曖昧で。
それなのに、声が聞きたいなんて、顔が見たいなんて思ったのはどうしてなんだろう。