【完】七瀬先輩と秘密の恋におちて
【14.】「ただ、顔が見たくて」
閉め忘れた教室の窓から夏風が流れ込む。
昨日杏奈を迎えに来た津田先輩が、七瀬先輩が心配するなんて、そんなことを言っていたけど。
杏奈に七瀬先輩とのことはまだ話せてない。
それにもう、七瀬先輩とはあれ以来一度も会ってないから。
「違うよ?津田先輩が言ったからじゃないよ?」
「え……?」
「あの日、八重が熱中症で倒れた日。あたしがお水を買いに保健室を出てった時ね、すれ違った人がいたの」
いつになく真剣な面持ちをした杏奈がわたしをまじまじと見つめてくる。