【完】七瀬先輩と秘密の恋におちて
ああ……もう、どうしてこう噂は尾ヒレはヒレついて一人歩きしちゃうんだろう……。
もし訂正させてもらえるならこの場で「キスなんてしてません」って主張したいくらい。
一時間目は朝からわたしの大嫌いな体育の授業で、灼熱の夏の太陽に肌が晒されてヒリヒリした。
「その女の子って、誰なんだろうね、八重?」
正反対にわたしの胸の中はヒヤヒヤしっぱなしで落ち着く暇もなかった。
短距離のタイムを測り終え、あと少しで授業終了の鐘が鳴るのを待つわたしと杏奈は、暑さから逃げるように木陰の下に腰をおろした。
「……さっ、さぁ?わたしは、七瀬先輩に興味がないから、知らないけど」
この数日はどうやらその変な噂のせいで毎日悲鳴と泣き崩れるような女の子達の会話が飛び交って、その度に当事者のわたしはどきまぎしてしまう。