伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
真剣な眼差しでライルに見つめられ、彼の言葉が心にスッと入ってくる。

クレアはようやく理解した。

その瞬間、顔がこれまでに無いほど火照り、心臓が早鐘のようにドクドクと鳴る。

……わ、私を……好き……!?




「……う、嘘……っ」

「嘘じゃない。本当だ。それに、俺は好きでもない相手に、あんなキスをしたりしない」

「……え……!」

……そういえば……!

クレアの脳裏に先ほどの出来事がよぎる。

ベッドに押し倒されて、貪るように唇を奪われた。

その時は、突然すぎて考える余地もないほど、驚きと悲しみの感情の方が大きかったが、改めて思い返すと、かなり……いや、ものすごく恥ずかしい。

ライルからの愛の告白と、唇に残った荒々しいほど情熱的なキスの感触に、ついにクレアの思考回路は許容範囲を越えた。

……もう……ダメ……倒れちゃう……。

頭の中がクラクラして、失神してしまいそうになる。

背中から後ろに倒れてしまいそうになった体を、ライルにしっかりと腕で支えられ、そのまま、優しく抱きしめられた。

互いの体が密着し、クレアは羞恥心を抑えられず、ますます目を回した。

「……あ、あの……私……」

声がうわずってしまう。

「返事は今すぐじゃなくてもいいから。ただ、どうしても俺の気持ちを知っていてもらいたかった。ゆっくりでいいから……俺との将来を考えてくれないか?」

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