伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
「まあ、すごい、お庭があんなに真っ白!」
翌朝、目覚めてカーテンを開けたクレアは、感嘆の声を漏らした。
昨夜、珍しく王都で雪が降った。長い間降り続きはしなかったが、夜の空気に冷やされ、溶けることなく、朝まで残っていたのだ。
「溶けるかしら?」
クレアはジュディに尋ねた。
「そうですね、今朝から太陽が出ていますので、昼間には溶けるかもしれませんね」
「ちょっと出掛けたい所があるんだけど……」
「お店でございますか?」
「いいえ、別の……。でも、すごく大切な場所なの」
昼前、クレア一人を乗せた小さな馬車が、屋敷を出た。
石畳の路上は車輪の跡が幾筋も付き、雪は溶けているが、道の端や歩道には、まだまだ雪は残っている。
やがて、クレアが到着したのは、王都の北西にある、共同墓地だった。
雪の中、訪れる人はいなかったらしく、地面一面に雪が残っている。
雪を踏みしめ、クレアはその中の一角にたどり着くと、しゃがみこんで、墓石に積もった雪を丁寧に手で払った。
「……お母さん……」
そこは、母の眠る場所だった。
「最近、来れなくてごめんね……」
墓石に、話し掛ける。
「今日は報告に来たの。私、春になったら結婚するの。とても素敵な、私には勿体ないくらいの人なのよ。私、絶対に幸せになるわ。だから、見守っていてね」
クレアは微笑みながら、青空を見上げた。
「私の花嫁姿、お母さんにも見せたかったな……」
「じゃあ、天国の母上がすぐに見付けられるように、盛大に行うことにしようか」
翌朝、目覚めてカーテンを開けたクレアは、感嘆の声を漏らした。
昨夜、珍しく王都で雪が降った。長い間降り続きはしなかったが、夜の空気に冷やされ、溶けることなく、朝まで残っていたのだ。
「溶けるかしら?」
クレアはジュディに尋ねた。
「そうですね、今朝から太陽が出ていますので、昼間には溶けるかもしれませんね」
「ちょっと出掛けたい所があるんだけど……」
「お店でございますか?」
「いいえ、別の……。でも、すごく大切な場所なの」
昼前、クレア一人を乗せた小さな馬車が、屋敷を出た。
石畳の路上は車輪の跡が幾筋も付き、雪は溶けているが、道の端や歩道には、まだまだ雪は残っている。
やがて、クレアが到着したのは、王都の北西にある、共同墓地だった。
雪の中、訪れる人はいなかったらしく、地面一面に雪が残っている。
雪を踏みしめ、クレアはその中の一角にたどり着くと、しゃがみこんで、墓石に積もった雪を丁寧に手で払った。
「……お母さん……」
そこは、母の眠る場所だった。
「最近、来れなくてごめんね……」
墓石に、話し掛ける。
「今日は報告に来たの。私、春になったら結婚するの。とても素敵な、私には勿体ないくらいの人なのよ。私、絶対に幸せになるわ。だから、見守っていてね」
クレアは微笑みながら、青空を見上げた。
「私の花嫁姿、お母さんにも見せたかったな……」
「じゃあ、天国の母上がすぐに見付けられるように、盛大に行うことにしようか」