雀の恩返し
「今日は来てますか?」
祈るように聞くけど
おばさんは無情にも首を横に振り
「ずーっと働いて、正社員の話もあったんだけど昨日で辞めてしまって。おばさん達も寂しいさ」
って言われてしまった。
ダメか。
パートも辞めたか。
もう本当に居ないんだ。
さよならなんだ。
「大丈夫かい?」
重苦しい顔をしているのだろう
掃除のおばさんは心配して僕に声をかける。
「大丈夫です。ありがとうございます」
多少引きつりながら笑顔を返し
僕は重い足取りで自分の席に戻る。
【さよならじゃなくて
出会えてありがとうですからね】
手紙に書いてあった。
出会えてありがとう。
今は言えない。
でも必ず言うよ。
いつの日か
必ず言えるように努力するから。
そう
いつの日か 必ず。