雀の恩返し
「僕はここからの景色が好きなんだ」
車イスのお兄ちゃんのとなりで
まどから見える海を見る。
「おくじょうはもっと見えるよ」
そう教えてあげたら「車椅子を卒業したら連れて行ってね」って言われた。
お兄ちゃんとおはなしをした。
お兄ちゃんはおなじ小学校の6年生。
かめやま ひろと って名前だった。
「スズメちゃんって、漢字でどうやって書くの?ひらかな?」
「ちがうよ。鈴芽はちゃんと自分でカンジでかけるんだから。こんどおしえてあげるよ」
「そっか。僕の病室はここの階の201だよ。いつでも遊びにおいで。【面会謝絶】って札があるけど無視していいからね。とっても元気だから」
あそびに行っていいの?
うれしい。
「そうか、スズメちゃんはお父さんが病気なんだね。毎日看病に来て偉いぞ」
ほめられちゃった。
なんかネコさんになったきもちで
心がくすぐったいよ。
「僕は交通事故なんだ。両親とお兄ちゃんと一緒に車に乗ってたらね、居眠り運転のトラックと衝突して崖から落ちたんだ。でもね僕が一番重症だったんだって。笑っちゃうよね」
お兄ちゃんはたのしそうにわらってる。
「両親もお兄ちゃんも奇跡的に無事で、打撲と切り傷だけで僕だけ骨折で入院。あとの家族は別の病院で入院してるんだ。ケガは大丈夫だけど脳波とか精密検査で一ヶ月ぐらいかかるんだって。そんなにかかるのかな。よくわからないけど。だから病院が別々になってしまって、スマホもどこかに飛んで行って連絡とれないんだ」
こんどは
さみしそうなかおになるお兄ちゃん。