雀の恩返し
無敵な彼女
エゴマがどんな物かわからないけど
口の中がエゴマエゴマしていた。
会社に着いてすぐコーヒーを注ぎ、自分の席まで持って行くと
「朝から亀ちゃんがコーヒーとは珍しい」
隣の席から声がかかる。
同期の中岡正志(なかおか まさし)。
僕と正反対のタイプで多少の軽さはあるけれど、人懐っこくて明るくて誰とでも仲良くなれる人気者。
背が高くて話が上手くて
女の子大好きなイケメン同期。
「二日酔い?」
ツツーッと自分の椅子をクルクル回して、僕のデスクにベッタリ貼り付く。
「いや……別に」
エゴマ酔いが正解。
「亀ちゃんさー。明日の金曜日ヒマ?」
「忙しい」
パソコン立ち上げて即答すると「冷たいー」ってデレデレ崩れた。女子か。
「超カワイイ女の子達と合コンやるんだけど来ない?」
ヒソヒソ話で耳に囁くけど「行かない」ってまた即答。
「行こうよ。亀ちゃん連れてくと女の子喜ぶもん」
「おだてるのは上司だけにして」
「いやマジだって。亀ちゃん顔が可愛くてジャニ系だもん。そこに座ってるだけでいいから」
「いーやーだ」
「頼むってー」
「他のヤツ誘って。今週中に提出する資料もあるし」
「俺は亀ちゃんに言って……」
僕と中岡がゴタゴタやってると、急に部長とめったに部屋に来ない常務がやって来て部署は緊張に包まれた。