雀の恩返し

「三ヶ月の間に男とヤッてくるなよ。お前の初めての男は俺様だ。籍が入ったら身体が壊れるぐらい可愛がってやるから。その約束を破ったらお前はまた掃除担当。もうお前のレシピはシェフが覚えてるだろう。お前を二度と調理場に入らせないからな」

料理ができなくなる。
それだけは嫌だ。

「三ヶ月間だけだよ」

きつく言われたけど
後悔はない。

戻ってからの自分は、もうどうでもいい。
あの男の嫁になっても
初夜に身体を壊されても
もう
どうでもいい。

三ヶ月間だけ
お兄ちゃんのそばにいたい。
お兄ちゃんと暮らしたい。

最後に病院で見たお兄ちゃんは、大きな声で泣いていた。
大切な家族を亡くして
ひとりぼっちになってしまったお兄ちゃん。
絶望の闇に飲まれたお兄ちゃん。

今は幸せですか?

お兄ちゃんを幸せにしたい。


私は次の日
小さな寝袋と少ない荷物
そして
コツコツと貯めていたお金を持って


海の見える
田舎の町を飛び出した。






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