雀の恩返し

「私もずっとご主人様が好きでした。ずっと……ずっとずっと好きでした」

涙がポロポロこぼれる鈴芽。
嗚咽をこらえながら彼女は僕に過去を語る。

僕が急に退院した後の話。
母親がパート先のホテルの現金を持ち逃げした話。
鈴芽が借金の代償になってる話。

「私には一千万の借金があるんです」

驚くというのか
無茶な話に
呆れて何も言えない僕。

「どうして借金が持ち逃げした額の倍になってるの?」

「……利子……とか」

ありえない。
だって
今までどんだけ過酷な労働を子供にさせてんだよ。

「二週間後の私の誕生日に籍を入れて結婚します。初夜は私の体を壊すぐらいヤリまくって……」

「やめろーーー!」

我慢限界。
僕は鈴芽の口を亀のぬいぐるみで押さえつけた。

「女の子が『ヤリまくる』とか言うな」
頭がクラクラする。

「だって……でもいいんです。私はもうどうでもいいんです。ご主人様と三ヶ月間幸せだったから」

「いやそれ困る。僕達はこれからだよ」

「はい?」

「いまから、ここから」

「それは湯のみに書いてる言葉です」

うん。
名言だよ。みつをさん。



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