雀の恩返し

たまに
ふらりと飛び立って
一日どこかへ出かける時もある。

そんな時
僕は不安でしょうがない。

あと二ヶ月って言いながら
このまま戻らないかも。

いや戻らなくていいだろう
助けた雀なんてありえない。
どこかの家出娘が、家に入り込んだだけ。

元から僕はひとりだった。
だから元に戻るだけ
普通の生活に戻るだけ……なのに……不安でたまらない。

するとふらりと「ただいま帰りました」と、元気に戻って来るスズメ。

僕はホッとする。
そして
ホッとする自分を嫌になる。

あと二ヶ月でさようなら。
その時僕は
どんな顔をするのだろう。


最初から出会わなければよかった。

だから僕は犬を飼えない。


「いってらっしゃいませー!」

ベランダから飛び出しそうなくらいの勢いで、スズメは僕を送り出す。

僕はいつも
コソコソと逃げるように走り出し駅に向かう。


そんな毎日。

心が温まって
人に優しくなる毎日。


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