この想いが届くまで
04 思いがけない再会2
男は都心にそびえるビルの最上階からの景色を見下ろしていた。
六十年前に一人の女性が立ち上げた小さな会社は、今ではこの会社が作ったジュエリーやバッグ、靴などの製品(ブランド)は日本中の若い女性が憧れ、近年では日本だけではなくニューヨークやフランスにまで事業を拡げ世界中で愛されるブランドになっていた。
そんな会社の三代目の社長に就任したのは創業者の孫である西崎弘斗(にしざき ひろと)。彼が社長に就任したのは半年ほど前のことだった。
社長室の扉をノックする音が聞こえ扉の方へと目をやるとスーツを着た男が一人部屋の中へと足を踏み入れた。
「失礼します。社長、そろそろお時間です」
「あぁ、もうそんな時間か」
秘書の百瀬に促され、椅子にかけたジャケットを手に取る。
「こちら、お戻りになられてからでいいので目を通しておいてもらえますか」
百瀬は社長机の上に束になった資料を置いた。
「これは?」
「中途採用試験、明日の最終面接にきていただく方々の名簿と履歴書のコピーです」
「面接? 俺が?」
「今専務も営業部長も海外での事業拡大に尽力されて不在ですし、副社長も明日はどうしても外せない会合があります。最終面接ですので役員が一人もいないというのもどうかと……と、いう話を先週したはずです」
「面接なんてやったことないんだけど?」
「形だけで結構です。最終面接までにかなり厳しく合格者をしぼったと人事から聞いています」
「なるほどね。明日の面々は合格が決まってる人たちばかりってことか」
面接なんてやる意味があるのか? そう思いながら西崎は何気なく机に置かれた資料を手に取った。資料の一番上にある受験者の所属予定部署と名前がしるされた名簿を見てある名前が目に入って呟いた。
「槙村……未央……。どこかで……」
どこか見覚えのある名前。西崎は名簿の下にある履歴書をめくるが、目的の人物にたどり着く前に「社長? どうかされました?」と百瀬に止められる。
「いや、なんでもない。行こう」
西崎は資料を机の上に置くと社長室を出た。
六十年前に一人の女性が立ち上げた小さな会社は、今ではこの会社が作ったジュエリーやバッグ、靴などの製品(ブランド)は日本中の若い女性が憧れ、近年では日本だけではなくニューヨークやフランスにまで事業を拡げ世界中で愛されるブランドになっていた。
そんな会社の三代目の社長に就任したのは創業者の孫である西崎弘斗(にしざき ひろと)。彼が社長に就任したのは半年ほど前のことだった。
社長室の扉をノックする音が聞こえ扉の方へと目をやるとスーツを着た男が一人部屋の中へと足を踏み入れた。
「失礼します。社長、そろそろお時間です」
「あぁ、もうそんな時間か」
秘書の百瀬に促され、椅子にかけたジャケットを手に取る。
「こちら、お戻りになられてからでいいので目を通しておいてもらえますか」
百瀬は社長机の上に束になった資料を置いた。
「これは?」
「中途採用試験、明日の最終面接にきていただく方々の名簿と履歴書のコピーです」
「面接? 俺が?」
「今専務も営業部長も海外での事業拡大に尽力されて不在ですし、副社長も明日はどうしても外せない会合があります。最終面接ですので役員が一人もいないというのもどうかと……と、いう話を先週したはずです」
「面接なんてやったことないんだけど?」
「形だけで結構です。最終面接までにかなり厳しく合格者をしぼったと人事から聞いています」
「なるほどね。明日の面々は合格が決まってる人たちばかりってことか」
面接なんてやる意味があるのか? そう思いながら西崎は何気なく机に置かれた資料を手に取った。資料の一番上にある受験者の所属予定部署と名前がしるされた名簿を見てある名前が目に入って呟いた。
「槙村……未央……。どこかで……」
どこか見覚えのある名前。西崎は名簿の下にある履歴書をめくるが、目的の人物にたどり着く前に「社長? どうかされました?」と百瀬に止められる。
「いや、なんでもない。行こう」
西崎は資料を机の上に置くと社長室を出た。