この想いが届くまで
未央が新着メッセージの通知が入るたびに飛びつくようにスホマを手に取るようになったのはここ最近のこと。
しかし思い描いた人物からの連絡はなく、二日、三日と時が過ぎ「あぁ、もうあと少しで一週間か」と時が過ぎたときにはもう期待もなにもしなくなっていた。
金曜日、仕事のキリがついて時計を見るとちょうど定時だった。帰宅しようと荷物をまとめているとバッグの中でスマホが震えた。期待するだけ無駄だ、そう思いながらスマホを手に取って確認すると意外な人物からの連絡だった。
昼は主婦や女子大生で賑わう人気のカフェ。夜はお酒も飲める大人のレストランに変わる。人気店で、おまけに週末。いつもだったら並ばないと入れない店だったが定時で上がって直行し、時間もまだ早かったこともあってすんなり入ることができた。
広々とした座席と高い天井。隣との席の間隔も広く会話をしていても隣が気にならない。この人気店を指定したのは未央だ。未央は先に到着し、席に案内され連絡をくれた相手を待った。
十分ほど待って先に飲み物でも頼もうかとメニューに手を伸ばした時だった。
「ごめん! 誘ったの俺なのに遅くなって」
「いいよ。おつかれ」
現れたのは遠藤陽一、未央の前の職場の同僚だった。
「今日大丈夫だった?」
「うん。ちょうど帰ろうとしていたとこで……遠藤君からの連絡に気づいて」
「なんだかその呼び方、新人の頃思い出すよ槙村さん」
あはは、とお互いに声出して笑うとメニューを手にとり注文をまずは先に済ませた。
「久しぶり。……元気だった?」
「うん」
「仕事……は?」
「うん、ちゃんとまた就職したよ」
二人で会うのも会話をするのも久しぶりだ。未央の新しい職場の話、遠藤の未央も知る同期や同僚だった人物の話など積もる話に会話はどんどんと弾む。
「髪どうしたの? いつも短くてすっきりした印象だったけど……伸ばすの?」
「違うって、ここんとこずっと忙しくて美容院とか行ってる暇なくて。今日やっと落ち着いて……明日やっと行ける」
「いや絶対私の方が忙しかったし。先月とかもう毎日お昼食べる時間もなくてどんどんやつれて……」
「そうか?」
遠藤はテーブルに肘を置き少し身を乗りだして、パスタを頬張る未央をじっと見た。
「今日、久々に会って思ったんだけど。前にも増して綺麗になったよな」
「そういうこと、あんまり軽々しく言わない方がいいよ。女の子は勘違いするんだから」
未央は勘違いした女の一人だ。遠藤は良くも悪くも正直で、良いところはとことん褒める。未央とは仲がよかったからなおさらだ。たくさんの言葉に勇気をもらって背中を押され、いつも優しく自分の味方でいてくれる彼に未央はかつて恋をしていた。
「いや別に。口説いてるわけじゃないし。……あ、分かった。彼氏できた?」
「できてない」
「じゃあ……好きなおと」
「いない」
「好きなおとこ」
「いません」
「最後まで言わせてよ」
好きな男でもできた? その言葉を食い気味に制する。未央は居心地が悪くなって話題を変える。
「あぁ、もう。そっちは? 理沙とはうまくやってるの?」
「うん」
「そう、よかったね」
良かった、自然とその言葉が言えた。ほっとして自然な笑みがもれる未央とは対照的に遠藤は少し緊張した面持ちになる。
しかし思い描いた人物からの連絡はなく、二日、三日と時が過ぎ「あぁ、もうあと少しで一週間か」と時が過ぎたときにはもう期待もなにもしなくなっていた。
金曜日、仕事のキリがついて時計を見るとちょうど定時だった。帰宅しようと荷物をまとめているとバッグの中でスマホが震えた。期待するだけ無駄だ、そう思いながらスマホを手に取って確認すると意外な人物からの連絡だった。
昼は主婦や女子大生で賑わう人気のカフェ。夜はお酒も飲める大人のレストランに変わる。人気店で、おまけに週末。いつもだったら並ばないと入れない店だったが定時で上がって直行し、時間もまだ早かったこともあってすんなり入ることができた。
広々とした座席と高い天井。隣との席の間隔も広く会話をしていても隣が気にならない。この人気店を指定したのは未央だ。未央は先に到着し、席に案内され連絡をくれた相手を待った。
十分ほど待って先に飲み物でも頼もうかとメニューに手を伸ばした時だった。
「ごめん! 誘ったの俺なのに遅くなって」
「いいよ。おつかれ」
現れたのは遠藤陽一、未央の前の職場の同僚だった。
「今日大丈夫だった?」
「うん。ちょうど帰ろうとしていたとこで……遠藤君からの連絡に気づいて」
「なんだかその呼び方、新人の頃思い出すよ槙村さん」
あはは、とお互いに声出して笑うとメニューを手にとり注文をまずは先に済ませた。
「久しぶり。……元気だった?」
「うん」
「仕事……は?」
「うん、ちゃんとまた就職したよ」
二人で会うのも会話をするのも久しぶりだ。未央の新しい職場の話、遠藤の未央も知る同期や同僚だった人物の話など積もる話に会話はどんどんと弾む。
「髪どうしたの? いつも短くてすっきりした印象だったけど……伸ばすの?」
「違うって、ここんとこずっと忙しくて美容院とか行ってる暇なくて。今日やっと落ち着いて……明日やっと行ける」
「いや絶対私の方が忙しかったし。先月とかもう毎日お昼食べる時間もなくてどんどんやつれて……」
「そうか?」
遠藤はテーブルに肘を置き少し身を乗りだして、パスタを頬張る未央をじっと見た。
「今日、久々に会って思ったんだけど。前にも増して綺麗になったよな」
「そういうこと、あんまり軽々しく言わない方がいいよ。女の子は勘違いするんだから」
未央は勘違いした女の一人だ。遠藤は良くも悪くも正直で、良いところはとことん褒める。未央とは仲がよかったからなおさらだ。たくさんの言葉に勇気をもらって背中を押され、いつも優しく自分の味方でいてくれる彼に未央はかつて恋をしていた。
「いや別に。口説いてるわけじゃないし。……あ、分かった。彼氏できた?」
「できてない」
「じゃあ……好きなおと」
「いない」
「好きなおとこ」
「いません」
「最後まで言わせてよ」
好きな男でもできた? その言葉を食い気味に制する。未央は居心地が悪くなって話題を変える。
「あぁ、もう。そっちは? 理沙とはうまくやってるの?」
「うん」
「そう、よかったね」
良かった、自然とその言葉が言えた。ほっとして自然な笑みがもれる未央とは対照的に遠藤は少し緊張した面持ちになる。