この想いが届くまで
「……別にいいの。人の気持ちは私には決められないから。彼が彼女のことを好きなら……それで仕方がないの。仕方ないって納得するしかないわ。でも、彼女の態度が。……ははっ。別に謝られても困るけど、でもそれでも、私の気持ちを知っているのだから少しくらい配慮してくれてもいいのに……私に当たるような態度と言葉で、謝罪の言葉どころか私を気遣う言葉もなかった。同期だけど、彼女の方が立場は上なの。向こうのが出世が早くて。入社した時は一緒に手を取り合って、それもつい最近まで私はそう思って彼女のサポートをしてきたんだけど……いきなり、見下したような態度で……わけわかんない。みじめでやってらんないって感じ……」
「私の……今までなんだったんだろう……。好きな人がいて、友達がいて、普通に仕事して……そんな毎日が、突然なくなっちゃうなんて」
ポツリと最後、虚ろに呟くと未央はようやく口を閉じた。未央はグラスを手に取って口に運ぶが溶けた氷の水分が流れてくるだけだった。
グラスを置いてから、自分が語る間一言も言葉を発さなかった男のグラスに目を向けた。同じようにグラスには氷が残っているだけだった。
「ねぇ、何か頼……」
ドリンクの追加を訴えようとして途中で言葉を失った。男が、自分の手を握りしめたままじっと前を向いて涙を流していた。
綺麗な涙の粒が滑らかに頬を伝っていく様子に未央は目を奪われた。
「……すまない。好きな人と友人を同時に一度になくした君の気持ちが伝わってきて」
男は指の腹で頬についた涙をぬぐうと、突如未央の肩を抱き寄せた。
「君のために俺が出来ることってある?」
肌を触れ合わせながらそう囁かれると、酒がまわって火照った身体にさらに熱が増した。
シャツから香る清潔感のある匂い、心地が良い体温、耳にしっとりと響く艶っぽい声。そのすべてに酔いしれて心を奪われたかのような感覚。
未央は相手の肩に頭を乗せさらに身を寄せて言った。
「今夜は帰りたくない」
「私の……今までなんだったんだろう……。好きな人がいて、友達がいて、普通に仕事して……そんな毎日が、突然なくなっちゃうなんて」
ポツリと最後、虚ろに呟くと未央はようやく口を閉じた。未央はグラスを手に取って口に運ぶが溶けた氷の水分が流れてくるだけだった。
グラスを置いてから、自分が語る間一言も言葉を発さなかった男のグラスに目を向けた。同じようにグラスには氷が残っているだけだった。
「ねぇ、何か頼……」
ドリンクの追加を訴えようとして途中で言葉を失った。男が、自分の手を握りしめたままじっと前を向いて涙を流していた。
綺麗な涙の粒が滑らかに頬を伝っていく様子に未央は目を奪われた。
「……すまない。好きな人と友人を同時に一度になくした君の気持ちが伝わってきて」
男は指の腹で頬についた涙をぬぐうと、突如未央の肩を抱き寄せた。
「君のために俺が出来ることってある?」
肌を触れ合わせながらそう囁かれると、酒がまわって火照った身体にさらに熱が増した。
シャツから香る清潔感のある匂い、心地が良い体温、耳にしっとりと響く艶っぽい声。そのすべてに酔いしれて心を奪われたかのような感覚。
未央は相手の肩に頭を乗せさらに身を寄せて言った。
「今夜は帰りたくない」