この想いが届くまで
 残りの仕事と言っても一件メールの返信を済ませたら未央も帰宅しようと思っていた。自席に戻り着席すると同じ部署に所属する年下の社員が小走りでやってきた。
「槙村さん、さっき彩佳さんと出ていきましたけど彩佳さんは……?」
「もう帰ったよ。どうかした?」
「それが……N社の土屋様が急にいらしゃって。まだ連絡すれば間に合うかな」
 スマホを取り出す社員に「ちょっと待って」と止める。
「彩佳さんにお客様ってこと? 伝言預かるだけじゃだめかな? 私、対応するし」
「あぁ、槙村さんそうか。知らないですよね」
「んん?」
「昔からうちの様々なイベントの運営をお願いしている会社の担当者なんですけど……半年くらい前に今の担当者に変わって、初回挨拶で彩佳さんが対応したんですけどだいぶやばい人だったみたいで次に彼がみえたら絶対自分以外は対応するなって。必ず自分を呼べって言われてて……」
「分かった。私行くよ。部屋の手配だけお願いしてもいいかな?」
(やばい人とは……セクハラ? パワハラ?)
 彩佳の事情を知っているし、その場にいない人がいると困るような状況ではだめだと思い未央は立ち上がった。
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