この想いが届くまで
 一通りのいきさつを話し、やはり未央の予想通り簡単にあぁ、そうなんだと受け入れてはもらえなかった。その後さらに一時間経過した今もまだ、同じ話を何度も繰り返していた。
「まってまってまって……え? 未央の初めての火遊びの男が転職先の社長だったって私聞いてないよ? え、ほんとにあの人? はっ、そういえば前にここで社長の話した時あんた態度おかしかったよね」
「ごめん、あの時言えなくて……私もあの時はじめて知ったから動揺して……!」
「……分かった。全部本当の話だったとしよう」
「本当なんだってば……!」
「……私もうやだよ? あんな未央見るの。失恋して酒に溺れ、私の当時の彼氏、元カレのタバコ吸えもしないのに奪ってやさぐれて……」
「あぁっ! その話はもうしないでぇっ。あれは失恋もだけどそれ以上に……!」
「……未央はいい女だよ。外見だって、性格も素直で正直なとこ私超好きだし。でも相手は……たぶん雲の上の上の上くらいにいるような人で、ほんとに本気なの? 私は未央に傷ついてほしくない」
「……ありがとう、志津加」
 志津加の未央を思う気持ちが痛いほど伝わってくる。だからこそしっかり自分の想いを伝えたかった。
「社長は言葉にいつも迷いがなくてまっすぐなの。……理由はちょっと言えないけど、嘘をついて人を傷つけることは絶対にしない。ちゃんと痛みが分かる人だと思ってる」
「……」
「それに私今不思議と全然浮ついてなくて、日に日に落ち着いて今は地に足がついてるっていうか……。忙しい人だからあまり会えないからかもしれないけど。でも寂しいとか不安もなくて、私も私のやることちゃんとやろって毎日思えるし、なんで私なんだろう、私なんかつり合わないって卑屈にもなったこともなくて、なんかもうほんとに自分でもよく分からないんだけど」
「……自信があるんだ?」
「うん……」
「それは自分に? 相手に想われてる自信?」
「……どっちも、かな」
「ほぉ? まぁ、あれだけのエリートに言い寄られれば私無敵! って思うよ。敵なしよ」
「ちょっと待って!? そういうのとはちょっと違うかも……っ」
「あはは!」
 志津加は豪快に笑うとテーブルに頬杖をついて「未央の気持ちは分かった」と言って優しく笑った。
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