この想いが届くまで
お腹を満たした後は未央の新しい部屋を見るために、西崎の知り合いが経営しているという不動産会社に行きエリアや間取り、家賃などの希望からいくつか紹介してもらい、実際に何軒か見て回ったがこの日は決めることが出来ず、未央も引っ越しを焦っているわけでもなかったため早めに切り上げた。
早めと言っても外出した時間が遅かったため気づけは夕方になっていた。
「せっかく付き合ってもらったのに、決められなくてごめんなさい」
「いや、色んな部屋を見れて楽しかった」
「弘斗さんは今の家どうやって決めたんですか?」
「俺は特にこだわりはないんだけど、セキュリティだけはしっかりしてくれって会社にうるさく言われて今のとこを今日の不動産会社に紹介してもらったんだ」
「タワーマンション……憧れます」
「うち部屋余ってる」
「そ、それって……。毎日ドキドキして心臓が休まらず寿命が縮みそうなので止めておきます……」
「変な理由だな」
一度呼べてしまえば名前を呼ぶことも出来、一日ずっと一緒にいれば緊張もほぐれ冗談を言って笑い合えるようにもなった。
明日は月曜日。いつも通りの日常が始まる。今日は帰らなくてはいけないことは未央は分かっていた。車中から薄暗くなっていく外を見ながら寂しい気持ちになってくる。
「明日からまたしばらく忙しそうだ。未央は?」
「私は今は落ち着いていてほとんど定時に帰れてます」
「そうか。会いたくなったら連絡していい?」
「……今、忙しいって」
「時間が作れる日もあるよ。だから未央もいつでも連絡してくれ」
「……いつでも、いいんですか?」
「うん」
甘やかされるのは苦手だ。相手に対して申し訳ないという気持ちが勝るから。しかも相手は少し前まで偶然にでしか顔を合わせることすら叶わなかった人だ。それなのに、少しの我がままなら言っても平気なんだって思わせてくれるから不思議だった。
「これからどうする?」
「……今日も、一緒にいたいですって言ったら……その、だめですか? も、もちろん明日の朝は一人で早めに出ますし、夜も睡眠の邪魔をするようなことしませんし、なんなら別の部屋でも……」
「いいよ」
信号で車が停車し、お互いに隣を見て目を合わせる。
「俺はそのつもりだったけど」
「……!」
「朝まで一緒にいよう」
「……時々でいいので断ってもらえますか?」
「どういうこと?」
堪らず噴き出す西崎を未央はどこかフワフワした気持ちで見つめる。
「俺は自分のしたいように正直な気持ちを言っているだけだ。だから未央も遠慮しないで欲しい。迷惑かなとか考えてるんだと思うけど、俺からの要求に迷惑だって思ったことある?」
「……いえ。ドキドキして戸惑うことはあるかもしれないですけど、……全部嬉しいです」
「同じだよ」
車が動き出して、未央はどこか吹っ切れた気持ちで口を開く。
「……着替えとか色々欲しいので、一度私の家に行ってもらってもいいですか?」
「うん」
西崎は正面、未央は顔を横に窓の外の風景を、それぞれ別の景色を見ながら二人同じように嬉しそうに口元を緩めていた。
早めと言っても外出した時間が遅かったため気づけは夕方になっていた。
「せっかく付き合ってもらったのに、決められなくてごめんなさい」
「いや、色んな部屋を見れて楽しかった」
「弘斗さんは今の家どうやって決めたんですか?」
「俺は特にこだわりはないんだけど、セキュリティだけはしっかりしてくれって会社にうるさく言われて今のとこを今日の不動産会社に紹介してもらったんだ」
「タワーマンション……憧れます」
「うち部屋余ってる」
「そ、それって……。毎日ドキドキして心臓が休まらず寿命が縮みそうなので止めておきます……」
「変な理由だな」
一度呼べてしまえば名前を呼ぶことも出来、一日ずっと一緒にいれば緊張もほぐれ冗談を言って笑い合えるようにもなった。
明日は月曜日。いつも通りの日常が始まる。今日は帰らなくてはいけないことは未央は分かっていた。車中から薄暗くなっていく外を見ながら寂しい気持ちになってくる。
「明日からまたしばらく忙しそうだ。未央は?」
「私は今は落ち着いていてほとんど定時に帰れてます」
「そうか。会いたくなったら連絡していい?」
「……今、忙しいって」
「時間が作れる日もあるよ。だから未央もいつでも連絡してくれ」
「……いつでも、いいんですか?」
「うん」
甘やかされるのは苦手だ。相手に対して申し訳ないという気持ちが勝るから。しかも相手は少し前まで偶然にでしか顔を合わせることすら叶わなかった人だ。それなのに、少しの我がままなら言っても平気なんだって思わせてくれるから不思議だった。
「これからどうする?」
「……今日も、一緒にいたいですって言ったら……その、だめですか? も、もちろん明日の朝は一人で早めに出ますし、夜も睡眠の邪魔をするようなことしませんし、なんなら別の部屋でも……」
「いいよ」
信号で車が停車し、お互いに隣を見て目を合わせる。
「俺はそのつもりだったけど」
「……!」
「朝まで一緒にいよう」
「……時々でいいので断ってもらえますか?」
「どういうこと?」
堪らず噴き出す西崎を未央はどこかフワフワした気持ちで見つめる。
「俺は自分のしたいように正直な気持ちを言っているだけだ。だから未央も遠慮しないで欲しい。迷惑かなとか考えてるんだと思うけど、俺からの要求に迷惑だって思ったことある?」
「……いえ。ドキドキして戸惑うことはあるかもしれないですけど、……全部嬉しいです」
「同じだよ」
車が動き出して、未央はどこか吹っ切れた気持ちで口を開く。
「……着替えとか色々欲しいので、一度私の家に行ってもらってもいいですか?」
「うん」
西崎は正面、未央は顔を横に窓の外の風景を、それぞれ別の景色を見ながら二人同じように嬉しそうに口元を緩めていた。