溺愛ドクターに求愛されて
『別れよう。もう無理だから。弘樹の事、もう信用できない』
そう打ち込んで、送信ボタンを押すことをためらってしまった自分に苦笑いする。
だってちゃんと好きだった、弘樹の事が。この人と結婚するんだって、そう思ってた。
涙が滲んで携帯の画面がぼやける。震える指で送信ボタンを押して目を瞑った私の瞳から涙が一粒、こぼれ落ちた。
それと共に終わったのだ。私の四年間の恋愛は終わった。
四歳年上の弘樹とは外科病棟に移ってから親しくなって、弘樹から告白されてお付き合いが始まった。
全然接点のなかった内科病棟にいた時から私の事が気になってたって言ってくれて嬉しかった。
デートを急患でドタキャンする事もあったけど、文句の一つも言ったことはなかった。
いつもそれを弘樹が誉めてくれたから。
仕事に理解があって助かるって、そんな沙織が好きだって言ってくれてたから。