溺愛ドクターに求愛されて


本当は寂しいと思っていても、それを口にする事はなかった。


だって私、同業者だし。医療関係者がそんな事思っちゃいけないと思ってた。


それは今も変わらないけど、もしかして岸本さんだったら……上手に甘えられてたのかもしれない。


誕生日に旅行を計画してくれてすごく嬉しかったのに、まさかこんな気持ちで誕生日を迎えるなんて思ってなかった。


そうこうしているうちに京都に着いて、私は新幹線を降りて歩き出す。


京都駅から直通のホテルを選んだから、観光にも楽でいい。


だけど、とにかく今は早く一人になりたかった。


さっきからずっと携帯が震えている。


きっと弘樹だと思う。あまりにしつこく鳴り響くそれの通話ボタンを押して、私は携帯を耳に当てた。

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