溺愛ドクターに求愛されて
古から続く縁
険しい山道に呼吸が乱れて汗が吹き出してくる。
乱れた息を整えようと立ち止まると、満天の星空が目に入った。
夜空を見上げて、闇夜を照らす月を見て数日前に最後の別れを告げたあの人を想う。
今頃あの人は何をしているのだろうか。
あなたと一緒に行けないとあの人は言った。それは分かっていた事だ。分かっていても、溢れる想いを口にせずはいられなかった。
あの人は、あの土地で神にその身を捧げる人生を選んだ。
そんなあの人を私は好きになったのだ。
真っ直ぐで、凛とした強さを持つあの人のことを、許されないと、叶わないと知りながら愛してしまった。
たった一度、交わした口づけ。柔らかな唇の感触を思い出して唇を指でなぞる。
その豊かな黒髪を、白い肌を、輝く瞳を、あの人のすべてを思い出して胸が妬けつくように痛んで瞳から涙が溢れ落ちる。