溺愛ドクターに求愛されて
『もしもし、沙織? やっと出た。沙織、今どこにいるんだよ。会って、話したいって言っただろう。家に行ってもいないし』
焦ってるようなその声に私は苦笑いする。そりゃ、いないでしょうね。
私は今、京都にいますから。
「私は話すことなんてないよ。メールで言った通り、もう無理だから」
きっぱりとそう言った私に、弘樹は少し黙った。
『四年も付き合ってたのに、俺達こんなことで終わるの?あの子から迫られて……俺も少し魔が差したというか、それだけなんだよ』
こんな事……? そうなんだ、弘樹にとってはそうなんだね。
でもね、弘樹。それは私にとってこんな事でもなんでもなくて、すごく大事な事なんだよ。
「言ってたよね、私。浮気する人だけは無理だって」
私の父親は何回も浮気を繰り返し、私と母親を捨てて家を出ていった。