溺愛ドクターに求愛されて
二十九歳の誕生日
「うわ、ひどい顔……」
二十九歳の誕生日の朝、目が覚めた私は自分の顔を見てそう呟いた。
よくもまあ、あれだけ泣けるものだと思うくらい泣いた。
身体中の水分が全部涙として出ちゃったんじゃないかっていうくらい、こんなに泣いたのは大人になってからは初めてかもしれない。
泣き疲れて気を失うように眠ってしまったから、いつ眠ったのかも記憶がない。
とりあえず失った水分を補給しようとミネラルウォーターを一気飲みする。
それからシャワーを浴びて、持参してきたシートパックを顔に乗せた。
すっきりして一息ついたところで切ったままだった携帯の電源をいれる。
できればそうしたくなかったけれど、携帯がないと行き先調べたりできないし。
弘樹と岸本さんから何通かメールが届いていたけど、私はそれを読まないで消去して出掛ける準備を始めた。