溺愛ドクターに求愛されて
「ま、でも暗くなると危ないから下りながら話そうか。怖いなら手、繋いであげようか?」
笑いながらそう言われて、からかわれてると思ってちょっとムッとして首を横に振る私を見てその人はクスクスと笑っている。
「残念、わりと本気だったのに。じゃ行こうか」
そう言って歩き出したその人に慌ててついて歩き出す。今は本当に怖くて一人にされたくない。
「ねえ、名前聞いていい?」
「あ、はい。お……」
そう聞かれて本名を答えそうになって私は口ごもった。よく知らない人に、いきなりフルネームを教えるのも……変、かな。
「……舞依です」
そう思ってつい偽名を、しかも元カレの浮気相手の名前を口にしてしまう。
本名を名乗らないにしろ、何でよりによってその名前にしてしまったのか自分でも謎だ。
後悔している私をちょっとだけ疑うような目で見て、その人はニヤッと笑った。