溺愛ドクターに求愛されて
「すいません、お待たせしました」
そう言って病室に入ると井上さんは私を見てニコッと微笑む。
「こっちこそ、ありがとう。じゃあ、よろしく」
そう言われて私と井上さんは患者さんの身体に手を伸ばした。
「田中さん、お身体拭きますね」
この患者さんは人工呼吸器をつけているから、独特の機械音が部屋に響いている。
それを聞きながら患者さんを横に向けて服を脱がせて身体を素早く拭く。
新しいパジャマに袖を通し、背中の方に手繰り寄せて、古いシーツを丸めて新しいシーツを引きながら半分を同じように丸める。
「そういえば大谷聞いた?心臓外科に新しい先生来るんだって。何かすごく優秀な先生らしいよ」
人見知りでそういう情報に疎い私とは違って顔が広くて情報通な井上さんはいつもこうやって新しい情報を私に教えてくれる。