溺愛ドクターに求愛されて
稲荷山の方がきつかったけど、やっぱり少し息が切れる。裕介さんは全然平気そうだけど。
「すいません。私、歩くの遅くて」
そう言った私の手を握り直して裕介さんがニコッと微笑む。
「いや、ゆっくり歩いた方が沙織とずっと手繋いでられるから平気だよ」
甘く微笑まれて心臓がドキドキいい始めて、私は裕介さんをちょっと睨む。
「心臓、苦しくなっちゃうんでそういう事言うのやめてください」
「俺にドキドキしてくれるのは嬉しいけどね。でも、そうだね。今はやめといた方がいいね」
クスクスと楽しそうに笑う裕介さんに更に心臓がドキドキしてしまって困ってしまう。
気持ちを落ち着けようとまわりの景色に目をやると、緑が本当に綺麗で少し落ち着いてくる。
中門をくぐると、百五十段ある最後の難関が私を待ち構えていた。